六代目:生活の困難

生活の困難についてです

歌会終2021〜インターネットに愛をこめて〜

こんにちは。こばると(https://twitter.com/428sk1_guardian)です。

突然ですが皆さんは、「歌会始」という催しをご存知でしょうか?

歌会始(うたかいはじめ)は、和歌(短歌)を披露しあう「歌会」で、その年の始めに行うものを指す。現在では、年頭に行われる宮中での「歌会始の儀」が特に有名。

――フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』  

長い歴史を有する宮中の歌会始は,明治と戦後の改革によって世界に類のない国民参加の文化行事となりました。短歌は,日本のあらゆる伝統文化の中心をなすものといわれています。この短歌が日本全国のみならず海外からも寄せられ,これを披講する宮中の年中行事が皇室と国民の心を親しく結ぶものとなっていることは,誠に喜ばしいことであります。

――宮内庁

このような伝統と格式をもつ「歌会始」に敬意を表すべく、このたび当ブログでは、初の読者募集企画として、2021年の終わりを祝し、インターネットオタクがカスみたいな和歌をばんばか詠み合うこの世の終わりのような歌会、通称「歌会終」(うたかいおわり)を開催しました。

docs.google.com

お題は、クリスマスの季節にあやかり、「聖なるもの」にまつわる歌を募集しましたところ、2週間あまりという応募期間に、実に1576首もの応募作が殺到しました。

読者の皆さまに多大なる感謝と愛を捧げ、優秀作品を表彰すべく、先日、横浜市交通局の一同が集い厳正なる合同審査会を開きましたので、その顛末をご報告したいと思います。

――インターネットに、愛を。聖なるものに、祝福を。

 

 

それでは、各審査員の意気込みをご覧ください。

審査員長

こばると(@428sk1_guardian)

「みなさんに、愛を。」

審査員

みゃーこ(@mya_Lolita)

「厳しくやっていきます。」

たぎょう(@nei_145)

「君たち性格悪すぎない?大丈夫?」

ういお(@meshmesh_tk69)

「最高の、インターネット」

のこ(@NOCO_1002)

「黙れよお前ら」

haxibami(@haxibami)

「みんな、𝑳𝒐𝒗𝒆が足りないよ」

開会の挨拶

局員の皆さま、この「歌会終2021」最終審査会にお集まりいただきありがとうございます。

本大会発起人としても、2021年のインターネットの総決算たる受賞作を決定するにあたって、大きな感慨と責任を感じております。

さあ、始めましょう。我らがインターネットの、愛に溢れた千秋楽を――

そんな大それたもんじゃないだろ

その情熱はどこからくるんだよ

情熱というか、冷笑でしょ

もうお前の悪いとこ全部出てるよ。今の挨拶に

最高

それでは、本日の進行について説明させていただきます。

審査基準

今回は、応募作のうち特に秀逸な作品を大まかに全15部門に分けてノミネートし、最終的に各部門から1〜3首の優秀作品を決定、表彰する運びとなっております。

15部門、多すぎない?

これから15種類もの「インターネット」を浴びるのかよ。気が狂う

そのうち14部門については、全応募作の中から審査委員長の私が事前にノミネート作品を下読みで選び出してあります。事実上の一次審査ですね。

その一次審査を突破した作品のうち、ここにいる全員で議論をし、最終的な投票で各部門のトップを飾るにふさわしい作品を選び、表彰します。これからのインターネットに輝き続ける、名誉ある賞となりますので、皆さんぜひその責任と矜持をもって選んでいただきたく思います。

1年目の大会にそんな名誉があってたまるか

思い上がりがすぎる。それかインターネットを買い被りすぎ

最後の1部門は「審査員特別賞」です。惜しくも受賞に至らなかった作品の中から、我々が最後に1作品ずつ独自の基準で選ぶ特別賞。インターネットの歴史に刻まれずとも、我々の心の中には残り続ける、そんな愛ある賞となっています。

さっきから「愛」の主張が重いんだけど何 宗旨替えした?

それでは、さっそく第1の部門、ノミネート作品の発表に参りましょう。

第1部門・定型短歌部門

最初は「定型短歌部門」です。短歌の定型、いわゆる57577のリズムをしっかりと守ったうえで「聖なるもの」を詠みあげた作品をノミネートしました。

ちょっとまって 最初に定型を守った短歌がぜんぶ出尽くすってこと?

残りおふざけしか残ってないじゃん

まず応募作の大半が定型に従ってない前提の短歌コンテストがあることに衝撃を受けてる

お前が言うなよ お前が

「愛」や「生活」「宗教」といった特殊なテーマを詠み込んだ定型短歌は、別途のちほどの部門のノミネート作に回しました。これ以降定型の歌が出てこないということではございませんのでご安心ください。

それでは、「定型短歌部門」ノミネート作品・全9首の発表です。

  1. 死んでいい!観客はもう戻らない星降る丘で少女は踊る
  2. 蝋燭の匂いの午後の窓辺には聖なるものになりさうな鳥
  3. 春風は聖地巡礼するように出窓にすべて触れてまわった
  4. 夜の全てに〈イヴ〉の名前を与えよう それから彼の姿を見ない
  5. 僕たちはいつかどこかに還りつく 野に光る火を忘れたかった
  6. 八月のリオ・デ・ジャネイロの喧騒のオヤジの拳にこそ無垢はある
  7. 春よ、来い 波に名前を付けること、僕らの呼吸に終りがあること
  8. 焼け落ちた時計の鳩の鳴きごえはほろびじたいのほろびゆくこえ
  9. 白球は敵のグラブに収まって夏はあるべきところへ還る

いい

普通に短歌だ。感動してる

1番、これ完全にスタァライトだよね

エモい

スタァライト見てないからこういう内輪向けの歌はあんまり評価したくないな

なるほど それも一理ある

今、僕がカスのプレバトで詠んだ「花柳香子さん」から誰かがこのブログに辿りついてスタァライト短歌を詠んでくれたというそのこと自体にめちゃくちゃ感動してる

ところで僕は6番を推したいんですが

わかる。これは光ってた

伝統的なクリスマスのイメージから一見遠い「八月のリオ・デ・ジャネイロ」から始まっていますが、ちゃんと「聖なるもの」と向き合っている一首ですね。私もこれは好きな歌です。

そうなんだよね 単に勢いだけで高く跳び上がって最終的に身投げするみたいな作品かと思ったら、「にこそ無垢はある」でうまく衝撃を逃がしてきれいに着地してる

パワーワードを重ねるだけ重ねて後片付けもせず、こっちの鑑賞センスを一方的に問うてくる甘えの塊みたいなオタクとは一線を画している

オタク、パワーワードに甘えがちだからね

君たちさっきから棘がない?𝑳𝒐𝒗𝒆が大事だよ

受賞作品

皆さま、議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の決定・発表に参りましょう。

実質最優秀作品でしょ

事実上の決勝戦だもんこの部門

本部門の受賞作は、次の3首に決定しました。

【定型短歌部門賞①】

僕たちはいつかどこかに還りつく 野に光る火を忘れたかった

なんとも言えない妖しさをもった歌です。本大会のテーマ「聖なるもの」と合わせると、旧約聖書出エジプト記のイメージを彷彿とさせます。我々はどこから来て、どこへ還ってゆくのか、そんな太古から連綿と続く我々人類の永遠のアイデンティティを思わせます。

【定型短歌部門賞②】

白球は敵のグラブに収まって夏はあるべきところへ還る

学生にとっての最後の試合、「夏」との訣別を切り取った一首です。部活の交流試合、それとも甲子園のような大会でしょうか。「さみしい」とも「残念」とも言わずに、ただ達観して試合の、そして青春の終わりを見つめる語り手に、大人になっていく青年の自立がうかがえます。

【定型短歌部門賞③】

八月のリオ・デ・ジャネイロの喧騒のオヤジの拳にこそ無垢はある

審査員からの印象が最もよく、満場一致で受賞を最初に決めた一首でした。助詞「の」で次々と切り替わる映像の最後に、それまでの喧騒のイメージと一転、静謐な響きで示される「無垢」な一閃の光。遠く離れた南米もまた「聖なるもの」によって祝福されている、そんな愛のまなざしを感じる歌です。

素晴らしい

本大会の良心

ここからさらに14部門もあるのか…

続いての部門に参ります。

第2部門・575部門

続いては「575部門」です。

ちょっとまって

ここはカスのプレバトじゃないんだよ

短歌コンテストにも関わらず、数多くの575形式の「句」が応募作として寄せられました。

その多くがナンセンス芸術などという作風では補いきれない駄作の数々でしたが、そうした句にも惜しみなく愛を注ぎ、供養する目的で設立された部門になります。

だんだんお前の言ってる「愛」の意味がわかってきた。最悪だねお前

いちばん性格が悪い

575を舐め腐ってる奴らに私怨をぶつけたいだけだろ

𝑳𝒐𝒗𝒆を悪用しないで……

それでは、「575部門」ノミネート作品・全3句の発表です。

  1. ポン酢かな ポン酢じゃないよ プレゼント
  2. 真っ赤だね サンタの通った 雪血路(ゆきちみち)
  3. 俺蛙?お前が蛙?蝉の音

少なすぎるしどれも最悪

一次審査で絞りに絞ってこれなの?

基本的に怖い句しかない

2番はスプラッタホラーだし、1番も精神にくる怖さがある

何と何を間違えた結果の「ポン酢かな」なんだよ

3番は芭蕉をひねくりすぎてもうわけわかんなくなってる

「蛙」「蝉」「古池」などのワードを含む芭蕉のパロディ句は他にもありましたが、唯一作品として独立した世界観を確立していたのはこの1句と判断しノミネートしました。本当はこれみたいな句が10倍ぐらいあります。

他の奴らは全員これに負けたのか。不憫すぎる

受賞作品

もうこれでいいんじゃないですかね

議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

未だかつてない不毛な議論だった

たぶん同じような議論があと10回以上続くよ

本部門の受賞作は、次の1句に決定しました。

【575部門賞】

ポン酢かな ポン酢じゃないよ プレゼント

絵描き歌のような軽快なリズムの中で、読者に提示されるイメージは「ポン酢」と「プレゼント」しかありません。全く関係ないように思えながら、しかしパ行の頭韻で結ばれたふたつは、読み手にどんなストーリーをもたらしてくれるでしょうか。鍋がおいしくなる季節、じっくりと思いを馳せたい一句です。

序盤から審査員長にこんなデタラメを言わせて、恥ずかしくないのかインターネットの諸君

好き勝手やればいいってもんじゃないんですよ わかりますか?

ミツカンさん、案件お待ちしてま〜す

第3部門・怪文書部門

続いての部門は「怪文書部門」です。

残り全てが該当するだろこの部門

もうこの大会の真打

語呂だけはいい、だけれども全く意味はわからない。そんな、単なる書き散らしに見える作品ばかりをノミネートした本部門。かのマルセル・デュシャンは、陶製の便器にサインをしただけのオブジェを「作品」として発表することで、いわゆる現代アート、前衛芸術の出発点を開きました。こうした多様な試みを「詩」として受け入れることで、これまでもこれからも「便所の落書き」と呼ばれ続ける、そんな愛すべきインターネットにふさわしい賞となるでしょう。

取ってつけたように「愛」って言うのやめない?

それでは、「怪文書部門」ノミネート作品・全10首の発表です。

  1. へいらっしゃい!炙りキリンに冷え文月まで揃ってるお店ですわよ~~~~~!!!!!!
  2. ほんとはね トナカイではない ほんとはね ほんとのほんとは 鰹のポン酢
  3. ゴー☆ジャスが本当に欲しかったものはマダガスカルの郷土料理
  4. 難病の子供が死んで CM のあとはパンツの早食いバトル
  5. ちいかわをグーで殴って誰よりも遠くまで飛ばした人の勝ち
  6. 一日の清算の時茹でトマト晩餐あああ喉がああああ
  7. 第五百宇宙速度で駆け抜ける箱根温泉一泊二日
  8. 総体としての客体 見えているバナナと闇と鮭の燻製
  9. 問五百、前問の狐の赤が、狸の緑の場合はどうか。
  10. ルール7:バベルジェンガが崩れたら母語から順に喋れなくなる

本当に怪文書

31音の定型は概ね守られているだけ逆に恐ろしい

もっと長文で送りつけられた怪文書もありましたが、ほとんどが冗長なだけか他のウェブサイトからの剽窃であったので失格としました。

2番、またポン酢じゃん

実はもう秘密裡にミツカンから案件もらってた?

ポン酢部門はないので落選

5番の勢いほんとすき Twitterのユーモアすぎて憎たらしいけど殴らせてくれるから許せる

血の気が多いんだよ君は

𝑳𝒐𝒗𝒆はどこへ…

9番これ似たやつ他でなかったっけ

「問十二、夜空の青を微分せよ。街の明りは無視してもよい」(川北天華)だね

明らかにこれの影響受けてそう

元ネタ知っちゃうとちょっとパンチ弱いな

7番と「五百」被ってるし そもそも何の問題用紙に問五百まであるんだよ

カスの金八先生が作った定期テスト

受賞作品

議論が出揃ったようですので、受賞作の発表です。

改めて、こんなので激論してるのが嫌になってくる

序盤の疲れ具合ではない

本部門の受賞作は、次の2首に決定しました。

怪文書部門賞①】

ルール7:バベルジェンガが崩れたら母語から順に喋れなくなる

旧約聖書バベルの塔」の伝説を踏まえた一首です。本部門で唯一わかりやすく「聖なるもの」というテーマをクリアしていることに加え、冒頭で算用数字とコロン記号「:」を用いたことで、独特の現代SF的な世界観を獲得しています。大きなリスクとともに読み手の目の前に顕現する「バベルジェンガ」は、さながらデスゲーム作品の小道具のように、妖しく、そして危うくそびえ立っています。

怪文書部門賞②】

ちいかわをグーで殴って誰よりも遠くまで飛ばした人の勝ち

Twitter上などで大きな人気を博しているキャラ及び漫画シリーズ「ちいかわ」 をテーマにした一首です。チャーミングな絵柄と裏腹に社会的かつダークな展開を思わせるストーリーで話題になった原作のイメージに、この歌の持つ唐突な暴力性が不思議とマッチしています。中盤から最後にかけて通り抜ける爽快感は、かつてのCHAGE&ASKAのヒットナンバー「YAH YAH YAH」を思わせます。

〽︎今から一緒に これから一緒に 殴りに行こうか

とうとうこいつらおかしくなった

俺たちの選ぶ受賞作によって審査員長にこじつけの総評をたくさん考えさせられるの、いいかもしれない

くれぐれも責任を持って選ぶようお願いします。次の部門です。

第4部門・ズル部門

続いては「ズル部門」です。

何 まだなんかアウトローが来るの

これ以上意味わかんないズルを見せられてたまるか

前回のカスのプレバトでも、同じ文脈の作品を何作品にも渡って連投する連作や、応募フォームの入力欄にURLのみを貼りつけるなどの様々なズル作品が散見されました。そういった、隙あらばルールの穴を突こうとする日陰者根性に愛を注ぎ、称えるための賞になります。

こいつ、インターネットのありとあらゆる側面を潰しにかかってるぞ

体のいい宣戦布告だよこんなもん。生きて帰れると思うなよ

みんなが𝑳𝒐𝒗𝒆を見失っている…

それでは、「ズル部門」ノミネート作品・全2作品の発表です。

  1. おい!こりゃ一体どう言うことだ!なんで道にあんなにサンタがいるんだ!? ボブ
    あのサンタ…人を噛んでないか? ボブ
    見間違いか?今サンタに噛まれた奴もサンタになってたような… ボブ
    オッケー。一回整理しよう。 ボブ
    あのサンタはゾンビみたいに増える。嘘みたいだが本当だ。 ボブ
    いや、駄目だ。一旦冷静になろう。とりあえず今日は寝よう。 ボブ
    そうぞうしいベルの音で目が覚めた。あの腐れサンタどもが慣らしているらしい。 ボブ
    とりあえずあれは『サンタゾンビ』と呼ぶことにしよう。 ボブ
    そうか…そういうことだったのか ボブ
    あゔぁー サンタゾンビ
  2. https://twitter.com/dicesushi/status/1466975736955543554?s=21

2作品?

毛並みが違いすぎるし色々とツッコミどころがある

1番、これなに 存在しないSCP報告書の補遺?

最後サンタゾンビになったボブらしきものが律儀に署名だけしてるのは何なんだよ

「そういうこと」がなんなのかも謎のままだし

ちなみにこの連作ですが、1行ごとに別の作品として、およそ2日間をかけて一定のペースで計10作品が投稿されてきました。

怖すぎ

正気のままゆっくりと狂気が送られてきてる。サイコパスが犠牲者だったものをパーツごとに遺族に送りつけるのと同じ手法

で、2番のURLはなに

なんかクリックしたら画像と詩が出てきたけど。案外普通だね

いや、よく見ろ。こいつのユーザー名

f:id:umector:20211225112728j:plain

は?

あとプロフも

f:id:umector:20211225112743j:plain

は?は?なにこれ怖い

ブログ単位のストーカー?

受賞作品

激論さめやらぬ中ではございますが、そろそろ受賞作の発表に移りたいと思います

激論してたんじゃないんだよ。この後の身の振り方を案じてたんだよ皆で

僕たちは君のインターネット心中に付き合わされる気はない

本部門の受賞作は、次の1作品に決定しました。

【ズル部門賞】

おい!こりゃ一体どう言うことだ!なんで道にあんなにサンタがいるんだ!? ボブ
あのサンタ…人を噛んでないか? ボブ
見間違いか?今サンタに噛まれた奴もサンタになってたような… ボブ
オッケー。一回整理しよう。 ボブ
あのサンタはゾンビみたいに増える。嘘みたいだが本当だ。 ボブ
いや、駄目だ。一旦冷静になろう。とりあえず今日は寝よう。 ボブ
そうぞうしいベルの音で目が覚めた。あの腐れサンタどもが慣らしているらしい。 ボブ
とりあえずあれは『サンタゾンビ』と呼ぶことにしよう。 ボブ
そうか…そういうことだったのか ボブ
あゔぁー サンタゾンビ

「ボブ」と「サンタゾンビ」の出会い、行く末を切り取ったパニックホラー映画の切り取りのような連作です。少しずつ、時間をかけて紡がれていくストーリーには、応募フォームの回答一覧を見ながらリアルタイムで展開を追ってしまう少なからぬ魅力がありました。どこかで見たことがあるような口調のセリフ回しも、世界観作りに一役買っています。

「腐れサンタども」というワードセンスは結構好きだった

でもこれは短歌ではない。絶対に

第5部門・コピペ/盗作部門

続いては「コピペ/盗作部門」です。

こんなのが表彰される時点で終わりだよ

二度と文芸コンテストを名乗るな

インターネット上で文章を募集すると、少なくない輩が明らかにどこかの文章を切り張りしたオリジナリティのない作品を提出してくるものです。それは文芸作品しかり、高校・大学のレポートしかり。インターネット上でその局地とも言えるのが、近年SEOや閲覧数を伸ばすためだけに乱立しているアフィリエイトブログ、通称「いかがでしたかブログ」でしょう。

既存の面白い文章を定型句化・アレンジして掲示板などに貼り付ける「コピペ」文化はインターネットの黎明期から盛んでしたが、近年では元ネタへのリスペクトなしに構文のみを模倣する粗悪なコピペや、コピペと明言せずに既存のネタを使い回していいねやRTを稼ぐ、ハイエナのようなユーモアも散見されます。これ以前にも昔から、海賊版・割れソフト・偽装通販サイト・違法ダウンロードなど、インターネットにはさまざまな違法コピー文化が跳梁跋扈してきました。暗い歴史でありながら、こうした盗人根性に支えられて発展してきたインターネットの側面を、我々が無視することはできません。本部門は、愛と尊厳をもってこれまでのインターネットの影と向き合い、今を歩んでいくための賞となるでしょう。

お前、強い悪意を「愛」で塗り固めるときほど饒舌になるよね

生きづらくない?大丈夫?

それでは、「コピペ/盗作部門」ノミネート作品・全6首の発表です。

  1. こぬ人を松帆の浦のゆふなぎに焼くやJesusの身も焦がれつつ
  2. シモン アンデレ パウロ バルトロマイ 束になって 輪になって ヨハネ フィリポ 聴かせて カトリック
  3. オ前達の父母兄弟ハ国賊トナルノデ皆泣イテオルゾ
  4. Waka is easy. But sometimes they don't make sense. Refrigerator. Intelligibility. Another heptasyllable.
  5. 風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとやせん
  6. 長い歴史を有する宮中の歌会始は,明治と戦後の改革によって世界に類のないこ民参加の文化行事となりました。短歌は,日本のあらゆる伝統文化の中心をなすものといわれています。この短歌が日本全このみならず海外からも寄せられ,これを披講する宮中の年中行事が皇室とこ民の心を親しく結ぶものとなっていることは,誠に喜ばしいことであります。(く無い庁)

本当にオリジナリティのかけらもないね

こんな中から「面白いやつ」を見つけて褒めないといけないわけ?俺たちが何をしたんだよ

お前たちはこれぐらい面白くないことをしてただろ。その報いです

ごめんなさい

1番の出典は小倉百人一首ですね。権中納言定家「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」の改変です。

エスをぶち込むならもうちょっと他の部分も聖書寄りに変えてほしかったなあ

そもそもイエスは焼かれてない。もっと勉強してください

5番も浅野内匠頭の辞世の歌そのまんまだし。尊厳というものがないのか

ユーモアを自分で殺すのは勝手だが最期の時ぐらい自分の言葉でやれよ

6番、「く無い庁」だけの思いつきでやった感がすごい

でも「親しく」の「く」が取れてないから落選です

小手先で勝負するならせめて徹底してくれ。3番の「の」だけ平仮名なのも然り

4番なに?

"Haikus are easy / but sometimes they don't make sense / refrigerator"っていう海外ミームがあるのよ

お〜いお茶新俳句大賞にも「ひなまつりあられひしもちあと5文字」という句が選ばれたことがありますね。同等のナンセンス句の試みでしょう。

もうあるユーモアのパクリで面白いことした気になってるってことね 最悪

受賞作品

それでは、議論も出揃ったようですので、受賞作の発表です。

部門ごとに史上最低を更新していくコンテスト

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【コピペ/盗作部門賞】

シモン アンデレ パウロ バルトロマイ 束になって 輪になって ヨハネ フィリポ 聴かせて カトリック

PUFFYアジアの純真」の替え歌に、イエスの弟子の名前を乗せた作品です。「聖なるもの」というテーマを表面上ながら入れ込んでいることに加え、残りの6人の弟子はどこで出てくるのか、思わず続きが気になってしまう構成になっています。令和の世に福音を伝える新しい讃美歌として、新たな定めを与えられたPUFFYのお二人の今後に目が離せません。

PUFFYに変な役目を与えるな

オタクの替え歌一つで大御所ユニットが動き出してしまった

関係者の皆様に深くお詫びします

第6部門・罰当たり部門

続いては「罰当たり部門」です。

全部見てないからわからんけど9割そうだよ、多分

「聖なるもの」をどう信仰するかも自由なら、どう反発するかもまた自由です。しかしその2択を与えられたとき、なぜか決まって後者を選ぶ人間が多くいるのもインターネットの大きな特徴でしょう。或いはそれは、大きな力を示されたときの、人間の本能的な性格なのかもしれません。しかしそんな斜に構えたインターネットを、まっすぐ正面から受け止める愛があってもいいのではないでしょうか。どんな神仏が罰しても、僕たちはあなたを愛をもって見守っています。

理不尽な愛に巻き込まれたんだけど

こいつと一緒にだけはしてほしくない

それでは、「罰当たり部門」ノミネート作品・全8首の発表です。

  1. サン・ピエトロ大聖堂のなかには3人のピエロがいるらしい
  2. 愚かしさ それこそが人 人の性 そう言いながら男はワインの入ったグラスを傾け、飲むでもなく悪戯に転がした。キリスト、14の春である。
  3. キリスト「大川隆法です………」
  4. 十字架や キリストどもが 釘の的
  5. はい、先生!  聖母マリアの鼻クソは聖遺物には含まれますか?
  6. キリストの聖遺物(丸めたティッシュ
  7. キリストは馬小屋でお生まれになった その逸話だけが俺とおんなじ
  8. 言いたいなキリストあるある言いたいな今から言うよ 奇跡起こしがち

お前らが軽々しくイエスをキリスト呼びするな

本当に全て最低

2番、最初の575からここまで膨らませた意味ある?

キリストが痛い中学生になって終わった

たぶんこのイエスはどこかで自分の限界に気づいて泣いてヨセフの元に戻る

あと5番と6番は聖遺物をナメすぎ

丸めたティッシュを祀ったり強奪したりしてる聖堂、嫌すぎる

8番はそこそこよくない?57577も揃ってるし

キリストが起こすのは「奇蹟」と書くのが一般的なので、落選です

厳しいな〜

受賞作品

議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

読者のみんなに勘違いしてほしくないんだけど、僕らが受賞させた作品は僕らの意見ではないし、褒めてるわけでも奨励してるわけでもないよ

そうそう。愛をもってインターネットのひねくれを受け止めてるだけだから

保身のあまりこいつらも「愛」を濫用しだした

𝑳𝒐𝒗𝒆が失われていく…

本部門の受賞作は、次の1句に決定しました。

【罰当たり部門賞】

十字架や キリストどもが 釘の的

言わずと知れた芭蕉の「夏草や兵どもが夢の跡」のオマージュ句です。単なる安易なもじりにも思えますが、しっかりとゴルゴタの丘でキリストと罪人2名が共に磔刑に処されたエピソードを踏まえています。原句の切字「や」をうまく場面転換に活かした一方で、「跡」を「的」と大きく意味を読み替えて韻を踏みながら、しっかりと「罰当たりだなあ」で笑えるオチに着地させている点も見事です。もはや教養となった既存の2つの作品をうまく融合し、昇華させたパロディと言えるでしょう。

絶対こいつはそんなこと考えてない

けど面白がってしまったのは事実。僕らとこいつは同じ地獄に行く

愛の告白じゃん ヒュージラヴ

本当に最低

第7部門・インターネット観察部門

続いては「インターネット観察部門」です。

またなんか始まったよ。新しい悪意

悪意の、「愛」の部分

現実世界で起こるさまざまな愛の交錯に対して、積極的にその愛の中に参加することではなく、一歩引いて外側からその模様を記録することで愛を表現する、そんな対象化された控えめな愛の使い手が、インターネット上には多く渦巻いています。そんな慈愛の目線を称え、インターネットの愛の広さを世界に知らしめるため、この賞を設立しました。

いよいよ何言ってるかわかんなくなったんだけど

要するに、隙あらば世間を俯瞰する側に回って「自分だけはわかってる」って優越感を得ようとする斜に構えたひねくれ野郎を晒し上げるための賞ってことでしょ だんだん分かってきた

本当に最悪 募集した側も応募した側も相手のことを全く考えてない

相手のことを真剣に考えているからこその、愛です。

黙れ

それでは、「インターネット観察部門」ノミネート作品・全7首の発表です。

  1. てかLINEやってる?笑  夢も淋しさも全部まとめて乗り越えて冬
  2. バズツイの3スクロール下にある「びっくり😳‼️」してる純粋なリプ
  3. 性の6時間?うるせえケンタッキーでも食ってろ
  4. 逆張りのレパートリーの尽きてきたオタクに差し伸べる手はあるの?
  5. げに暗し当人だけがおもしろく感じるものをよむひとの背よ
  6. パソコンが若さの象徴だった日の亡霊として生きていこうや
  7. 有吉の壁の芸人につまらないっていう奴、クリスマス1人で過ごしがち

あれ、思ったより57577が多くて優秀

57577の作品が多いだけで相対的に「優秀」扱いになる短歌コンテスト、何?

そういえばこれって短歌コンテストだったんだっけ 忘れてた

1番、前半と後半の内容が飛びすぎてない?途中から別人格になったでしょこいつ

いや、よく見る「てかLINEやってる?笑」の裏にはこういう複雑な感情があるのかもしれない

あなたにキモいLINEを送ってくる人たちや街で話しかけてくるナンパ師にも、ひょっとしたらこんな人生の機微があったかもしれませんね

嫌なACのテレビCM?

ところでインターネット標語みたいなのが真ん中に3つ4つぐらいあるんだけど

4番はなんか嫌だな 自分の限界を感じつつそれをアピールしてくるところに自分可愛さを感じる

わかる 差し伸べる手が誰もいないと真に絶望してるならあえて「あるの?」なんて聞かないのよ

5番もなあ 言ってることはわかるんだけど文語でかっこよくまとめようとしてるのがかえって腹立つ

わかってる感出そうとしてるな〜って感じ 冷笑を感じる

ちなみに「げに暗し」は古語表現ですが、文法上それに合わせるとなると「感じる」は「感ずる」とするべきですね。

そういう誤りも含めて、これをわざわざ頑張って書いた現代のインターネットオタクがどこかにいるという事実がおそろしい寒気をもたらしている

でもこの賞の本意には合ってるんじゃない?

受賞作品

みなさま、議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【インターネット観察部門賞】

パソコンが若さの象徴だった日の亡霊として生きていこうや

親しげでやわらかな口調でありながら、内容の鋭さに肉迫するリアルを感じさせるメッセージがある一首です。使われる機器に限らず、メインストリームとなるSNSサービスやアプリ、話題も、どんどんと世代によって分断が進んでいく世の中に我々は生きている。そんな現実に、語り手も含めた読者全体を引き込んでいく魅力を持っています。平成生まれのインターネット、そしてこれからを作る令和のインターネットを支えていく標語として、輝き続けていくことでしょう。

机の前に書いて貼っておこう

家訓にしたい

僕たちも、Facebookやヤフコメにいるおじさんたちと同じような目線で一括りに見られるようになる日が来る

悲しい現実だ

𝑳𝒐𝒗𝒆にできることは、まだあるよ

第8部門・スベリポエム部門

長かった審査も、ついに折り返し地点となりました。続いては「スベリポエム部門」です。

おい

もうただのシンプル罵倒だろ。今度こそごまかせないぞ

インターネットでは2005年頃から「中二病」というスラングが定着し、主に思春期など発達段階において見られる、言葉遣いや外面的な行動で格好をつけたがるパーソナリティを揶揄して用いられるようになりました。「中二病」に限らず、意味から解放された、詩になりかけの散文を「ポエム」と呼んで揶揄するなど、インターネットには再構築されかけている発達段階の精神の発露を「未熟」「幼稚」とからかう傾向が未だ根強く残っています。

しかし、我々は彼らを単に笑っていて済むものでしょうか。俳人・阿部筲人は著書『俳句 四合目からの出発』に、

だれが示唆したというわけでもないのに、初心者が最初に作る句は、必ず、柿がたった一つ梢に残り、必ず、夕陽が照らす。

星や灯は必ず「瞬く」と表わし、センチな人は「うるむ」と言います。雨は必ず「しとど」に降り、果物は必ず「たわわ」に生ります。紅葉や赤いカンナは必ず「燃え」、空や水や空気は必ず「澄む」で、帰路は必ず「急ぐ」とし、自転車は、必ず「ペダル踏む」とやります。

と書いています。表現や言動がじゅうぶん成熟したつもりになっている我々大人にも、重く響く指摘ではないでしょうか。華美に飾り立ててアイデンティティを確立しようとする発達段階の表現にも、成長を見守る愛の目線を向け続けるための賞として、この部門は設立されました。

悪意とかどうでもよく、シンプルに嫌な賞だ

今から背筋が寒くなってきた

それでは、「スベリポエム部門」ノミネート作品・全8首の発表です。

  1. 汚らしい四つの足跡 白い雪  清き我が身は顧みられず
  2. 駅前を照らす無数の光粒今年も想い紡がんとする
  3. 人生は生涯泣くばかり。ああ、命の句点は安らかに
  4. クリスマス 逆から読んだら スマスリク 粉雪と共に 散りゆく我が恋
  5. 雪の降る野原にひとり咲く花の色は顧みられることなく
  6. 人の子は星の光を掻き消して地上に星のなる木を生やす
  7. ビルの下行き交う人も足を止めスマホ取り出す光の木々は
  8. 雪に赤 家々回る 賢者哉 袋が宿すは 誰か子なりや

うわ〜〜

本当に、まともにトライしてまともに滑ってるのばっか

これを「賞」として晒しあげるわけ?本当に最悪だね

2つ3つぐらい「イルミネーション」の7音で済むことしか言ってないやつない?

8番とかも「サンタクロース」の7音で全部済むよね

あと「誰か子なりや」の意味がわからない

そう言い出すとだいたい全部多かれ少なかれ意味わかんないよ

しかも全部なにか明確に意味を伝えたさげなのに意味がわかんないんだよね。これまでのナンセンス芸と違って

これは厳しくなってきたぞ 突出した作品がほぼない

審査結果

議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作品の――

審査員長、ちょっと待ってください

なんでしょうか。

先ほどもありましたが、ノミネート作品の実力がほぼ拮抗している本部門で、どれか特定の作品を選ぶのは至難の業です

こじつけでどれかを強引に選んでしまうのも一つの手ですが、それはこの部門の設立理念、ひいては本大会の審査会全体の信頼を損ないかねません

いっそすべて合同受賞とすることも考えましたが、一次審査を通るに至らなかった数多くのスベリポエムたちのことを思えば、あまりに忍びない

よって、我々はここで決定そのものを辞退すべきかと

……なるほど。もっともかもしれませんね。

応募された皆さんのさらなる飛躍と成長に期待して、ここではあえて選ばない。それも、ひとつの愛の形でしょう。

本部門の受賞は、該当作なしということで、正式に決定します。

𝑳𝒐𝒗𝒆は、成し遂げられた

横浜市交通局は、皆さんの来年度の作品に期待しております

来年があるのかわかんないけどね

第9部門・言葉遊び部門

続いては「言葉遊び部門」です。

急にまともになった

何?

詩とは、詩性とは何か。その答えには様々ありますが、詩を散文と分けてきた大きな要素の一つに韻律・リズムの重視、すなわち、その詩が読者に読まれるときの聴覚的印象の特徴に重きを置く点があるでしょう。また、活字文化によって詩が文字で大量に書き写されるものとなったとき、詩は文字上の視覚的効果としての役割、いわば、目で読むためのリズムも持つようになりました。

ネットスラング、AA(アスキーアート)、縦読み……こうした言葉の詩的効果は、インターネットでも多様な試みとともに発展してきました。この部門は、短歌という詩形のもつ効果と向き合い、真剣に「言葉遊び」に興じたものを愛するための賞となっています。

ういおがたまに文字とか言葉の響きで遊んでるやつの亜種みたいな感じね

本当にまともだ

まともか?自分で言うのもなんだけど

それでは、「言葉遊び部門」ノミネート作品・全7首の発表です。

  1. ⛄️🎄🎁ください🎁欲しいです
  2. 「クリスマスツリー」の中に隠れてる、とても楽しいものは「マス釣り」
  3. 聖なるもの→クリスマス→ツリー→森→木→果物→バナナ マジカルバナナ
  4. エレベーター エスカレーター コンディショナー トランシーバー ウーパールーパー
  5. 神の子の お誕生日の お祝いに タオルを渡す お聖母マリア
  6. 牡馬牝馬 牡馬牡馬牝馬 牡馬牝馬 牡馬牝馬牡馬 牝馬牡馬牡馬
  7. [Shift][Tab][Enter][Alt][Escape][CapsLock][BackSpace]

全部アプローチが違う 見てて楽しい

一応ぜんぶ合計31音にはなってるのかな?

1番は「ゆきだるま/クリスマスツリー/プレゼントください/プレゼント欲しいです」だろうね

もらえるといいね

読んでて楽しいのはそうなんだけど、例えば4番の「聖なるもの」要素はどこ

ウーパールーパーじゃない?ブームあったし

だいぶ昔でしょ

それを言うなら7番とかの方が「聖なるもの」に何も関係ないよ

目の前のキーボードしか見てない たぶんこのオタクは猫背

ひどい偏見だ

でも聖なるものが入ってるからって5番みたいなのはどうなの お聖母マリアは失礼でしょ

だいたいマリアは祝われる側なんだよ みんなちゃんと聖書読んだ?

受賞作品

みなさま、議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【言葉遊び部門賞】

「クリスマスツリー」の中に隠れてる、とても楽しいものは「マス釣り」

一首全体でなぞなぞのような構成をとっている作品です。答えとして与えられる「マス釣り」は単語として一見きわめて自然ですが、「『クリスマスツリー』の中に隠れてる、とても楽しいもの」というお題からは少し飛躍しているように思えます。しかし、「クリスマスツリー」の中には確かに「マス釣り」という、これまた飛躍した予想だにしない単語が確かに隠れている。そこに気づいたとき、この2通りのミスマッチは、やがて不思議なおかしみとなって、読者の中で調和してゆくのです。

久々に心穏やかな審査だった

感動してマスが釣りたくなりました。嘘だけど

第10部門・性欲部門

続いては「性欲部門」です。

またなんか始まったよ

せっかく穏やかなまま進めると思ったのに

性欲、情動、リビドー。三大欲求のひとつでもあるそれは、現代ではインターネットの台頭によって、多様な嗜好に対しても、アクセスひとつで簡単に満たされうるようになりました。かつては秘められた芸術・表現として秘密裡に鑑賞されたエロスは、今や公然の秘密として、大衆化された趣味の一つに数えられるようになっていったのです。

それは本大会でも然りでした。今回の歌会終のテーマは、ご存じ「聖なるもの」でしたが、その「セイ」という音を、ともすれば安易に「性」に結びつけ、下ネタに走る応募作は多発。応募作一覧には極端な時には2分おきに性器の名称や性的行為にまつわる内容が投稿される事態となりました。

本当にかわいそう

これはオタクたちが悪い 反省して

しかし、性を詩に詠むことそのこと自体が悪いということではありません。官能性は文学を支えてきたひとつの大きな表現動機であり、小説や詩に限らず広いメディア表現の分野に影響をもたらしてきました。本部門では、性に関する表現の中でも、過度に性的なもの、短絡的で幼稚なものなどを省いた上で、本来「聖なるもの」と対極にあるとされる人間の俗的な欲求がどう詩に昇華しうるのかを鑑賞し、性というテーマを取り扱うことの意義を問い直す機会としたいと考えます。

露骨な下ネタは個人的に無理なので、配慮していただいてありがたい

なお、十分な配慮を心がけましたが、読者の皆さんにおかれましてはご注意の上この先をご閲覧ください(10行分の改行を挟んで続きが始まります)。こちらをクリックしていただくと、続いての部門にスキップすることができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでは、「性欲部門」ノミネート作品・全3首の発表です。

  1. 垂乳根の 愛おしむなる 嬢三人 我が人生での 聖なる三体
  2. なあ、聞いた? うちのクラスの聖女さま、バスケの部長とヤッたらしいぞ
  3. オナニーは 神聖なもの セックスは 糞汚いもの メリークリスマス

ねえまって

露骨な下ネタを極力排除してこれ?本当に?

これ以上ひどいやつが100倍ぐらいあったんだと思う

君も、インターネットの奴らも、最低

1番、マジでこれは色んな方面に謝罪したほうがいい

垂乳根の」も「三体」も、何もかもがスベっている

でもこれが一次審査を通ってる「マシな方」の作品なんでしょ

本当にゴミ

3番は勢いだけはあるけど正直言いたいだけでしょって感じが強いな

「メリークリスマス」で全てがごまかせると思わないでほしい

正直どれも選びたくないので、君たちで決めていいよ

受賞作品

議論が出揃ったようなので、受賞作の発表です。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【性欲部門賞】

なあ、聞いた? うちのクラスの聖女さま、バスケの部長とヤッたらしいぞ

下卑た噂話のような語り口で伝えられる一首です。クラスの中で憧れや好意を一手に受けることの多い生徒を「高嶺の花」「マドンナ」「王子」「姫」などと呼ぶことはまれにありますが、「聖女さま」と呼ぶ例は創作物でもあまり見かけません。それだけに、このクラスが「聖女さま」に向ける敬意・崇拝には、並々ならぬものが感じられます。しかし、その直後に語り手の口から語られるのは「聖女さま」の情動的な俗極まる一面を示すゴシップ。そんな醜聞を触れ回る立場でなお「聖女さま」と語り手・聞き手に共有される人物は、一体どんな目線を向けられているのでしょう。聖と俗、崇拝と侮蔑、人間の深まる二面性にぞっとさせられるものがあります。

正直消去法でこれしかありませんでした

僕は結構これ好きだよ

とにかく次行こう。次

第11部門・𝑳𝒐𝒗𝒆部門

続いては、「𝑳𝒐𝒗𝒆部門」です。

怖い 何?

それは本当に、𝑳𝒐𝒗𝒆ですか

先ほどの「性欲部門」では独りよがりな性的衝動をテーマにした作品が目立ちましたが、本来のクリスマスの雰囲気にふさわしく、家族や恋人、その他愛する人に向けた純粋な愛の歌を応募してくださった方も多くいらっしゃいました。和歌には、愛する男女間の贈答歌として送り合うものを特に「相聞歌」と呼ぶ文化がありましたが、本部門のノミネート作品は令和のインターネットに輝く現代の相聞歌として、後世にも語り継がれていくことと思います。

どうやら本当にほっこりしていい部門らしい

僕はまだ疑ってるよ

それでは、「𝑳𝒐𝒗𝒆部門」ノミネート作品・全12首の発表です。

  1. 好き ずっと ずっと好きだよ ラブソングながれる戦地に今着いたとこ
  2. 寒い 寒いので 抱き締めに行く モウセンゴケみたく君を抱きます
  3. ただ一度君に口づけされただけなのに聖なるペットボトルは
  4. 思い出を噛み締めないで抱きしめて聖なる夜はもう来ないから
  5. 裸婦像は幸福ですかしらじらと乳房の罅を晒し続けて
  6. 絶対に君と僕との関係を友情なんて言葉にしない
  7. j'aime, tu aimes, il aime, nous aimons, vous aimez, ils aiment 全人類に好かれたかった
  8. 本当に月が綺麗な夜更けには何と言うのか僕に教えて
  9. 恋文のなめらかな字に紛れてるぽっと止まったインキのにじみ
  10. ややあって渇いた口であのと言う 君は黙ってステレオを消す
  11. 愛すべき街で瞳に巡りあひ二度まばたきは聖夜の礼法

すごい 本当に短歌だ

輝いて見える

全部ぱっと見いいんだけど、この中から選ぶとなると「聖」の字がそのまま入ってるやつは外したい気持ちがあるね

うーん、確かに結構被ってるけどねえ

7番の前半のこれ何?フランス語?

フランス語の動詞「aimer」(愛する)の直説法現在形の活用を列挙したものですね。「私は愛す、あなたは愛す、彼は愛す、我々は愛す、あなた方は愛す、彼らは愛す」という意味です。

𝑳𝒐𝒗𝒆……

綺麗っぽいけど意味があんまりわかんないのは選びづらいな

2番、後半の比喩が独特で好きかも

えーそう?なんか、オタクの喋り方みたいでちょっと…

何言ってるの君

いやわかる。「寒い、寒いので」とか言ってるやつTwitterによくいる

途中で急にですます体になるのもめちゃくちゃそれっぽい

言いがかりすぎるだろ

なんならたぎょうのツイートにありそうだもん

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イメージ図

想像が容易にできてしまった。僕の感動を返してほしい

知らねえよ

まあでも独特の表現とかシーンを描いてほしいってのはわかるよ。6番とか8番みたいな単純な告白とか会話のシーンはどうしてもどこかで見たことがある感じがする

キャッチコピーとかにあったら素敵な表現だと思うけど、この中から突出してるかと言われるとねえ

そういう意味では10番とか僕好きですよ 着眼点の切り取りがいい

えっ

えっ

何?

なんでもないですごめん

変なの

受賞作品

議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

本部門の受賞作は、次の3首に決定しました。

【𝑳𝒐𝒗𝒆部門①】

好き ずっと ずっと好きだよ ラブソングながれる戦地に今着いたとこ

文字空け(スペース記号)を効果的に使うのがこの作者の特徴でしょう。一見ただひたむきなだけの愛の告白は、「ラブソングながれる戦地」に響くときその重みを変えます。語り手の声は、途切れ途切れにしか届かないのか、それとも何かを言い淀んでいるのでしょうか。「今着いたとこ」とすらっと待ち合わせ電話のように締める末尾にも、独特の哀愁が込められています。

【𝑳𝒐𝒗𝒆部門②】

裸婦像は幸福ですかしらじらと乳房の罅を晒し続けて

石膏か大理石の像でしょうか。裸婦像に限らず一般的にそうした時代に作られた像は、神話などをもとに作られたり、モデルとなった美男美女の美しさを讃える側面があり、生命力や艶かしさ、神々しさを感じさせる造形が特徴的です。この裸婦像は、おそらくほぼ完全な形で残って鑑賞されているのでしょうが、だからこそしらじらと晒されるような「乳房の罅」が目立ってしまっています。それを見つめ、「幸福ですか」と問う語り手は、いったい何を想うのでしょう。

【𝑳𝒐𝒗𝒆部門③】

ややあって渇いた口であのと言う 君は黙ってステレオを消す

愛の告白や、親愛な相手との会話を描いた歌は多くありましたが、この歌は唯一、そんなロマンチックな会話の前に起こる予兆・余韻を切り取った点でユニークでした。ひたむきな語り手が何かを決死の覚悟で「あの」と切り出すその聖別された瞬間。そして、それを「君」は何も言わず待っていて、ようやく話し出した語り手のためにステレオを消し、舞台を整えます。無言の信頼関係の上に成り立った、そんな静謐な舞台は、時間的にも空間的にもふたりだけのために切り取られた、ふたりだけの世界を彩っていきます。

良い

とてもよかった

あの、すいません

君さっきから変だったね 何?

最後のこの歌の作者、僕です

えっ

すごいじゃん おめでとう

インターネットの有象無象は匿名性を盾にマジのカスばっかり送ってきたけど、こいつらに匿名性を与えると逆に良い短歌を送ってくるのか

普通に嬉しい

どうだインターネット諸君。これが人間の成長だよ

こんなカスブログを書いている僕たちですら成長しているのに君たちときたら

やめなさいよ

第12部門・怨恨部門

続いては「怨恨部門」です。

またなんか始まりました

油断も隙もない

「祭り」「炎上」「レスバ」などの文化に代表されるように、昔からインターネットは怒り、憎しみ、妬み嫉み、私怨、怨念といった人間の感情の負のエネルギーが場となって渦巻き、誰かの精神や尊厳を食い潰すことによって発展してきた側面を持っています。その結果、インターネット上の言論がデフォルトで喧嘩腰であるかのようなイメージを持っている人々も少なくないように思われます。本部門はそうした人間の負の感情を愛をもって受け止めることで、明日へと繋ぐ平和の象徴としての賞となるでしょう。

この記事も十分すぎるほど怨念を感じるけどね

ほんとにひどいよ なにが平和だ

それでは、「怨恨部門」ノミネート作品・全8首の発表です。

  1. 千手観音像のすべての腕がお前に中指を立てている
  2. Shoot the Earth お前を殺し俺も死にこれで永遠に一緒だね
  3. 鬼は外 福は内 どちらでもない奴は次元の狭間に消えろ
  4. 消えてなくなれクリスマス 俺をいらない街も人も
  5. この前、聖なる夜だからと言いながらラブホに入ってく若いカップルがいたんですよ〜 な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜に〜〜〜〜〜〜〜やっちまったな! 男は黙って! 表現論! 男は黙って! 作用素環論!
  6. カップルは 学費の光で キスするな
  7. カップルを燃やして灯る聖なる火
  8. 聖の6時間のホテルのWi-Fiパス:堕とした子供の塩基配列

ひどい 本当にひどい

「斬新な罵倒表現」か「カップルへの妬み」のどちらかしかない

そういう意味で一番オリジナリティのかけらもないのは5番だよね

クールポコのネタもカップルへの僻みも表現論も作用素環論も、全てが人の受け売り 自然な感情がどこにもない

ところで「表現論」「作用素環論」ってなに こういうのを平気でぶっこむ理系のノリについてけないんだけど

どうやら主に数理物理の方面に応用される数学の一分野らしい

大学の物理学科ってこういうことを面白いと思ってる人たちが行くところなの?文転しようかな

7番も大概。なんでも燃やせばいいと思ってるあたり倫理観が中世で止まってる

お前の個人的な私怨で燃やす業火に神聖性があるわけがない

基本的にカップルを恨んでるばかりか小馬鹿にしてるよね 自分を情欲に流されない理性的な人間と勘違いしていそう

もうこの辺全部勘違いしてるから落選でいいよ

かといって前半もたいがい単なる怒りに身を任せてるだけなんだよなあ

Shoot the Earthじゃないんだよほんとに 巻き込まないでくれ

受賞作品

議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作の発表です。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【怨恨部門賞】

鬼は外 福は内 どちらでもない奴は次元の狭間に消えろ

節分の掛け声「鬼は外福は内」は、禍福の変化が生じやすいという立春の前日に厄除けのため、幸福を呼び込み災厄を忌み嫌う縁起担ぎの側面を持っていますが、現代では伝統行事としてよりイベントの側面の方が強くなった節分では、掛け声の意味が改めて意識されることは少ないかもしれません。この歌はそんな掛け声に「どちらでもない」存在への強い無関心を付け足すことで、自分にとって禍福どちらをなすかでしか周りを見ていないという強いエゴイズムを巧妙に表現しています。それでいて、「俺」「お前」といった具体的な人称を用いていないところも特筆に値するでしょう。

強い言葉を使わずに強い自我を表現してるの、自我が立ってる感じでいいね

ほんまか?

もうわからなくなってきた はよ終わってくれ

第13部門・VIP☆STAR部門

続いては「VIP☆STAR部門」です。

いちばん妙ちきりんなやつがきた

中身がわからんぶん怖い。何?

ニート」「ぼっち」「童貞」「低学歴」「非モテ」「陰キャ」――こうしたワードは、古くから現在に至るまでインターネット上で蔑称として用いられてきた、典型的な「弱者」としてのレッテル貼りです。これらの属性はレッテルであると同時に、インターネットに常駐する多くの人々の抱えるリアルなコンプレックスとしても長く共有されてきたからこそ、煽りフレーズとして成立してきました。

しかし次第にインターネットには、こうした脱却すべきとされてきた弱者性・劣等感をむしろ自分のアイデンティティとして保護に走り、罵倒の応酬にも見える弱者同士のレッテル貼りを通じて相互の劣等感を承認しあう文化が台頭します。こうした傷の舐め合いのような愛の文化が、今日までのネット・SNS社会を支え発展させてきたといえるでしょう。

令和のインターネットを支えてゆく、そうした人間らしさを称え、これからのインターネットに向けて送り出してゆくために、本部門は古き良き平成のインターネットを支えた通称「VIPPER」たちの愛の称号、「VIP☆STAR」をその名に冠しました。この賞がインターネットの未来に愛と祝福をもたらす賞となることを心から祈っています。

最悪

愛の名のもとならなんでもできると思うなよ

今日いちばん性格悪い

インターネットにいる全員と心中しようとしてる?

早くインターネットやめよう。君の精神衛生のため

それでは、「VIP☆STAR部門」ノミネート作品・全11首の発表です。

  1. 欲しいものリスト イヤホン(ワイヤレス) テレビ パソコン 聖夜の伴侶 
  2. プレゼント交換会をしてみたいけどやる人がいないんですよ
  3. 正月は ちゃんと季節と されるのに ぼっち年末は なぜダメなのか
  4. クリスマスに 生配信やってるのもムカつくな ビジネスぼっちのくせによ
  5. 来週の今頃はもうクリスマス今年も寂しくクリぼっちかな
  6. クリぼっち 神も仏も ありゃしない
  7. 引きこもりああ引きこもり引きこもり引きこもるなよ外で働け
  8. ひとり身の みんなと迎える クリスマス 裏切者は 誰だ
  9. カップルの6時間後を想像し夜に蔓延る聖☆おにいさん
  10. ああ聖夜 どうせ私は 床のシミ 死してしかばね 拾うものなし
  11. しかしだな お前に聖の 何がわかる 性も知らない ヒヨッコの癖に

うわ〜〜〜〜

怨恨部門以上に多様性がなくなった

クリスマスに勝手に変な劣等感を持ってるやつしかいない

これがインターネットの末路……

あとなんでみんなキレてんの?4番とかさ

自分で勝手によすがにして見てるVTuberにキレ出したら終わりですよ

2番とかは比較的穏やかだね 同情の余地がある

でも逆に、VIPPERはこんな丁寧な言葉遣いしないと思う もっと節操がないから

1番は?うまく57577にまとまってて綺麗な気はする

𝑳𝒐𝒗𝒆は買い物みたいに手に入れるものじゃなくて、自分から作っていくものだから…

深いね

深い

一同驚愕!涙が止まらない……

やめろって

あと9番の「夜に蔓延る」ってなに?「流離う」「彷徨う」あたりの間違いじゃないの

令和のクリスマスイブに蔓延する聖☆おにいさん、いいな

聖☆おにいさんはサンタじゃなくてイエスだし、そもそももうブーム過ぎたでしょ

受賞作品

みなさま、議論は出揃いましたでしょうか。それでは、受賞作品の発表です。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【VIP☆STAR部門賞】

カップルの6時間後を想像し夜に蔓延る聖☆おにいさん

カップルの6時間後」とは、インターネットで古くからまことしやかに囁かれている「クリスマスイブの夜9時から朝3時までの6時間が、1年間で最も性的接触が起こる6時間である」という俗説を踏まえたものでしょう。特に親しい人と一緒に過ごされることが多いビッグイベントをひとりで過ごすことへの抑圧、それに対する反発としての潜在的欲求の裏返しがこのような眉唾ものの俗説をいまだに根強くインターネットに信じさせているものと思われます。また、「聖☆おにいさん」は10年以上支持されている人気シリーズではありますが、初期連載開始は2006年、手塚治虫文化賞などの各賞受賞で大きな話題となったのは2009年と、やはり平成のインターネットの余波を感じさせる作品チョイスです。

こうした表現から、この作者もまた、我々と同じく平成とともに老いていく側の年代の感性の持ち主なのであろうと邪推せざるを得ません。これからは物心ついた頃からタッチスクリーンでインターネットに触れることができた、真のデジタルネイティブが背負っていく時代です。「パソコンが若さの象徴だった日の亡霊として生きていこうや」の格言を胸に、恥のないインターネット老後を送るよう心がけましょう。

講評とかじゃなくて訓戒じゃん

インターネット老人ホームにポスターにして貼ろう

第14部門・ていねいな暮らし部門

ラスト前の最後の部門は、「ていねいな暮らし部門」です。

冷笑の匂いがする

くるぞ……

これまで、さまざまな視点から「聖なるもの」と向き合ってきましたが、現代に残された「聖なるもの」とはなんでしょうか。ポストモダニズムすらもが過去の思想として顧みられる今、我々の想像できる神聖さはいとも簡単に、そしてつねに脱構築されていくことでしょう。そんな時代に我々が拠り所とできるのは、聖と切り離されていたこれまでの世俗とのつながり、日々の暮らしであるのかもしれません。聖と俗の対比、あるいはつながりを問い直す、そんな生活感あふれる歌をノミネートしました。

そういえば「生活」がテーマの部門があるって冒頭で言ってたな

本当に素直に受け止めていい?またインターネットオタクのゴミ屋敷暮らしみたいな歌ばっかりだったりしない?

暴力的な「インターネット」を浴びすぎてトラウマになってる。後遺症がひどい

それでは、「ていねいな暮らし部門」ノミネート作品・全12首の発表です。

  1. 生乾きパンツ6枚取り込む日7枚目には神が寝ている
  2. リースからうらうら滲みだすものを迎え入れたい隣人がいる
  3. クソエイム 神の名前を連呼する そのためだけに宗教は在る
  4. 夜景を目にしたときの君の眼裏よ illuminateは啓蒙の意味
  5. まっすぐじゃないサランラップにはまっすぐじゃないサランラップの精霊が憑く
  6. 帰り着く四畳半、戸の鈴止んでナザレのイエスはひとりで死んだ
  7. Hey Siri, あなたが箱を発った日はわたしをいちばんに連れてって
  8. Tシャツにパンにケーキにスプーンにフローリングに宿る神様
  9. 【12月24日(金曜日)】今日もいつもと変わらぬいい日
  10. 「久しぶり」疎遠になった友達の誕生日だけ毎年祝う
  11. 人は皆眠った街に雪が降るひらがなが降る地上波が降る
  12. 大きくてふわふわな犬がいるからクリスマスツリーは置けないの

本当にまともだった…

ひさしぶりの短歌だ 心が洗われるよう

5番のサランラップ、なんか好きだな

完璧じゃないところに宿る生活感。𝑳𝒐𝒗𝒆です

そう?なんかTwitterにたまにあるエッセイ漫画のふりをしてるネタ漫画の設定っぽくない?

お前最低 本当に最低

言われるとそうにしか見えなくなってくるからタチが悪い

FPSプレイヤーとしては3番の勢いはかなり好き

ちょっとかっこいいのはわかるけど引き合いに出される神がかわいそう

6番よくない?宗教テーマを素直に使っててちゃんと面白いからすごいと思う

確かに。味わい深い

いいと思います

…そうね

こういう真面目に宗教と向き合ったのが1個ぐらいあっていい

受賞作品

議論が出揃ったようですので、受賞作の発表に参りましょう。

本部門の受賞作は、次の1首に決定しました。

【ていねいな暮らし部門賞】

帰り着く四畳半、戸の鈴止んでナザレのイエスはひとりで死んだ

四畳半、おそらくワンルームに住んでいる一人暮らしの誰かの歌でしょう。戸に鈴をつけてささやかにクリスマスを祝うこの人物の情景は、「止んで」の接続助詞「で」から新約聖書の世界観に飛躍します。ナザレのイエスは弟子であったユダに裏切られ、腹心として仕えたペテロも最後には彼を見捨てることがわかっていました。罪人2名とともに磔刑に処された彼は、最後まで隣人を祝福する姿勢を曲げず、罪人のひとりを神の国に招き入れましたが、死ぬときはひとり、神に「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか」と叫んで亡くなったとされます。生前、死後、そして復活後多くの人々に慕われたイエスも、人の形をした神の子としての宿命を果たす死の間際、その今際の際においてはひとりであった。ひとり暗い四畳半に佇むこの人物も、そんなことに思いを馳せながら、彼なりの祈りを捧げ、「聖なるもの」と向き合っているのかもしれません。

よかった

極端にポジティブでもネガティブでもない、自分なりの姿勢でクリスマスと向き合ってるのがいいね

あの、いいですか。これ、僕でした

えっ

君か〜〜〜〜 ヒュージラヴ

まさかこのメンツから受賞者が2人出るとは。本当に気持ちよく終われる

言っておくけど談合じゃないからね

最終部門・審査員特別賞

いよいよ、審査も最終部門。審査員特別賞の発表のお時間です。

審査員の皆さんには事前に、これまでのノミネート作品も含めた全作品リストをお送りしました。その中で最も気に入った1首を一人ひとり発表していただきます。

それでは、まずは審査員長の私から順に、審査員特別賞の発表です。

受賞作品

【審査員特別賞・こばると賞】

死んでいい!観客はもう戻らない星降る丘で少女は踊る

定型短歌部門でノミネートされましたが惜しくも受賞には至りませんでした。感嘆符「!」で一瞬置かれる呼吸、「観客はもう戻らない」という台詞じみたフレーズを残して少女はひとり踊り続ける。私たちはこの歌を、映像作品「少女歌劇レヴュースタァライト」に登場する戯曲・スタァライトを踏まえた作品と理解しましたが、その内容を抜きにして鑑賞しても見事な幻想性とリズムを持っています。

【審査員特別賞・たぎょう賞】

カニカマの硬い部分で殴られて海はこんなに広かったのか

カニカマはうまいので、優勝

【審査員特別賞・haxibami賞】

Waka is easy. But sometimes they don't make sense. Refrigerator. Intelligibility. Another heptasyllable.

なんかheptasyllableってかっこよくないですか?

【審査員特別賞・のこ賞】

聖なる人「せい!」

精製された聖性に、清々した

【審査員特別賞・みゃーこ賞】

芭蕉は超えた

同じ芭蕉を超えし者として、歌詞に深く共感しました

【審査員特別賞・ういお賞】

ホーリーシット シッ!シッ!シッ!シッ!シッ!シッ!シッ! シャーッ!シ、シ、シャーッ! 馬場馬場馬場馬 高田馬場

高田馬場、虫を食える店が10m間隔で立ち並んでいるらしい

ありがとうございました。それではこれにて、全部門での審査を終了します。

人のこと言えないけどみんなひどいね

全員インターネットやめよう

それがいい

閉会の挨拶

皆様、この度は「歌会終2021」へのご参加、誠にありがとうございました。個人的には、聖なるもの、そして愛、インターネットの在り方について、深く考えることのできた大会ではなかったかと思います。

どれだけ君がインターネットと愛を馬鹿にしているかがわかった

𝑳𝒐𝒗𝒆の使い手として、極めて遺憾です

それでは、長い間お付き合いいただきましたお礼、そして皆さんへのお別れのご挨拶として、こちらをご覧ください。

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ハクサンシャクナゲ(2007年7月・木賊山)

これが、シャクナゲです。

は?

初夏の花として知られていて、この写真に咲いている種類は特にハクサンシャクナゲと呼ばれているそうです。

だから何だよ

以上です。ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。
花は毎年必ず咲きます。

――川端康成『化粧の天使達』

 

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